◆歯周病とは?◆
 歯周病は、歯垢(プラーク)中の歯周病原菌が歯と歯肉の間の溝(ポケット)に進入することによって、歯肉に炎症をひきおこし、それによって腫れや痛み、膿、出血などが生じる感染症です。さらに進行すると歯槽骨(アゴの骨)が吸収して溶かされ、その結果、歯が動揺するようになり、最後は抜けてしまう病気です。
 歯周病は成人の8割が罹患しているといわれる生活習慣病の1つで、成人以降の抜歯の多くは歯周病の進行によるものです。
 進行すると、
  ・歯がぐらぐらする
  ・歯肉から出血しやすい
  ・歯肉から膿が出る
  ・口臭がする
  ・歯肉に痛みやかゆみのような感覚を覚える
  ・歯と歯の間に隙間ができる
  ・歯が長くなったような気がする
などの症状がでてきます。

◆歯周病の原因◆
 
歯周病の原因はプラーク(歯垢)です。プラークは単に食べかすではなく、歯周病原菌を含む最近の塊で、1mg中に1億個の細菌がいるといわれています。
 歯周病原菌やその毒素によって歯肉に炎症が起きて、その結果として出血、膿、腫れなどが誘発されます。
 歯石はプラークが石灰化して硬くなったもので、表面がざらついているので、その上からさらにプラークがつきやすく増加していきます。

◆歯周病の進行◆
 
歯周病は少しずつ徐々に進行するため、気がつきにくく、出血や口臭といった症状が現れても、初期は痛み歩ともないにくいため放置してしまいがちです。
・健康な歯


 健康な歯は、歯肉と歯の境目にわずかに溝がありますが、その深さは0.5〜2o程度です。歯磨きで出血することもほとんどありません

・歯肉炎(歯周ポケット3〜4o)


 炎症がおこり、赤く腫れています。出血しやすい状態です。歯と歯肉に隙間ができ、これを歯周ポケットといいます。この時点では歯周炎とは呼ばず、歯磨きで治すことができます。

・軽度歯周炎(歯周ポケット4〜5o)


 歯周ポケットの溝は深くなり、骨と歯を結ぶコラーゲン線維が壊れて歯肉が破壊され始め、骨も溶け始めます。

・中度歯周炎(歯周ポケット5〜7o)


 ポケットから膿が出てきます。たくさん膿が出ると口臭がします。歯根が露出してきて歯石やプラークが付着しやすくなります。

・重度歯周炎(歯周ポケット7mm以上)


 歯茎全体がぶよぶよに腫れて歯がぐらぐらしています。最後には歯が抜けてしまいます。

◆歯周病の治療◆
1.応急処置
 痛みがあったり、被せ物が外れたりなど緊急性のあるものから優先して処置します。
2.検査
 X線写真、歯周ポケットの測定、歯肉からの出血、動揺度、咬み合わせ等の検査、生活習慣のチェック、歯周病原菌の検査等をさせていただき、情報を集めます。
3.治療計画の理解と同意(インフォームドコンセント)
 検査の結果から、現在の歯周病の状況やどのように治療していくかを説明させていただきます。患者さんの理解と同意を得て治療にはいります。歯周病は生活習慣病なので、患者さん自身の理解が非常に大切で、治療の成否を握ると言っても過言ではないでしょう。
4.初期治療(イニシャルプレパレーション)
 本格的な治療開始です。歯周病は患者さん自身と歯科医、歯科衛生士が協力して治していきます。この初期治療では歯周病の最大原因であるプラーク、あるいは歯石を取り除き、歯肉(歯ぐき)の炎症の改善をはかることを第一の目的として行われます。
1)ブラッシングの練習
 磨き残しをチェックし、歯ブラシ・歯間ブラシ・フロス等の正しい使い方を指導させていただきます。
2)スケーリング・ルートプレーニング
 歯石をとっていきます。ポケットの深い所は、麻酔が必要な場合があります。全部の歯が歯周病に罹患している場合、通常4〜6回に分けて歯石をとっていきます。歯周ポケットの深いところには、歯茎の下に歯石が付着しています。また、歯根には細菌が出す毒素が浸透しています。こういった汚染物質を機械的に取り除く処置をルートプレーニングと言います。
ポケットの深い部位では、局所麻酔を行い、ポケット内部に専用の器具を入れ、汚染物質を取り除いていきます。通常、麻酔が切れたとき、若干の違和感はありますが、鎮痛剤を服用することは少ないです。
3)その他
 虫歯の治療、咬み合わせの調整、保存不可能な歯の抜歯、不良な被せものの除去、知覚過敏症の処置、などを行います。
5.再評価
 初期治療後に一定期間待ち、その治療効果を判定のために再度検査します。検査結果をもとに、今後の見通しを説明させていただきます。初期の歯周病の方はここまでで治ってしまい、定期検査に入ります。深い歯周ポケットが残っている方は、必要に応じて歯周外科手術を行います。
6.歯周外科手術
 深い歯周ポケットが残っているところ歯周外科手術を行うこともあります。
7.再評価
 歯周外科手術後に一定期間待ち、その治療効果を判定のために再度検査します。定期検査の間隔を決定していきます。
8.定期検診(メンテナンス)
 歯周病(歯槽膿漏)の治療が終了しても、きちんとしたメンテナンスがされていないと再発してしまいます。
「個々の患者の歯周病(歯槽膿漏)に対する感受性や患者のコンプライアンス(協力度)が異なるために、患者様ごとの異なったメンテナンス期間を選択することが必要です


◆歯周病の予防◆
 歯周病の原因はプラーク中の細菌です。ですからプラークコントロール、つまりプラークを確実に取り除くことが最も大切なのです。その方法として正しいブラッシングをすること。では、“私はきちんと毎日ブラッシングをしているのに・・・なぜ?”と思われる方が多いと思います。それに、成人の80%が歯周病ということですが、その方々全員がブラッシングをしていないとは考えられません。それではほとんどの方がブラッシングをしているのになぜ歯周病にかかってしまうのでしょうか。その最大の理由は、きちんと磨いているつもりでもきちんと磨けていないのが実情だからです。

「磨いている」「磨けている」とは全く別のことになります。きつい言い方をすれば、
「磨いていても磨けていなければ意味がない」ということです。
ご自分に合った歯ブラシをお使いですか?歯ブラシの持ち方は正しいですか?正しい位置に歯ブラシが当たっているでしょうか?磨く順序は?お口の中が人それぞれは違うように、ブラッシングの方法も違って当然なのです。ですから、歯科医師と相談しながらご自分に合ったブラッシングの方法を見つけ出し、それを続けていくことが大切です。そうすれば、自然にきちんと磨けることにつながっていくわけです。
スクラッピング法  歯ブラシの毛先を歯と歯肉の境目に90度に当ててその位置で振動させる。
また、歯ブラシでは磨けないところは歯間ブラシ、デンタルフロス、部分磨き用の歯ブラシなどの補助器具
も併用することをおすすめします。こちらも、歯科医師と相談して正しく使用してください。
生活習慣の改善も歯周病予防の大切な方法と言えます。例えば、私たちの毎日の生活の中にある歯周病にかかりやすい要素を取り除いたり、食生活を改善することです。歯周病を増悪させる最大の要素は喫煙です。喫煙の習慣がある方は是非禁煙をおすすめします。また、繊維質、ビタミンCの豊富な食物をとりバランスの良い食生活を心がけましょう。そして、歯周病に負けない身体の抵抗力をつけましょう。

◆歯周病のメンテナンス◆
 いままでに治療が終わってから、こんな説明を受けたことはないですか?
 「今日で、治療は終りです。治りました。また、痛くなったり、問題があったら来て下さい。」
これって、本当に治っているの?
治療の成功は治療終了後、長期にわたり健康な状態が維持できて、はじめて評価できるものと思います。歯を抜きに歯科医院に行くのか、歯を保存するために行くのか、ということです。
ご自身の歯は、自分自身で守ることができるのです。もう、痛みがあってから治療するという従来型の歯科治療から脱却して、いつまでも健康なお口を維持するために歯科医院に行くと言う考えに変えてみてはいかがですか?
■定期検診(メンテナンス)はなぜ必要なのでしょう
歯周病は、再発が多い病気と言われています。その理由の一つにこのメンテナンスを受ける習慣が日本人には定着していないことがあげられます。歯周治療が終了しても、きちんとした管理ができていなければ再発してしまいます。実際に長期間にわたり歯周治療を行い、いったん健康を取り戻したにもかかわらず、メンテナンスを行わなかったばかりに2〜3年後に再発をしてしまい、抜歯しなければならない状態になった患者様もいます。
歯周病の治療中や治療終了直後は、歯周病菌が非常に少なくなっています。はじめは、ブラッシングも非常に注意をし、一生懸命に行っていますが、時間とともにだんだんおろそかになっていく場合もあり、再び歯周病菌が増殖し再発をおこしてしまうのです。メンテナンスとは、定期的に口腔内を管理することにより歯周組織の健康を維持していくことです。
■歯周病は再発の多い病気
メンテナンスとは歯周病を再発させず、健康な状態を維持していくための定期的な治療のことです。治療が終了した後は、3〜6ヶ月ごとの定期検診の受診をお勧めします。
歯周病は主に口腔内の細菌が原因で発病する疾患です。したがって、この細菌を生涯除去し続けることが歯周病を予防し、お口の健康を維持するために必要となります。
細菌の集団である歯垢は、毎日の適切なブラッシングでほとんど除去することが出来ますが、深い歯周ポケットの中や歯並びの悪い所にある細菌はブラッシングでは除去できません。これらは歯科衛生士による専門的なクリーニングによって除去してもらいましょう。
歯周病は再発の多い病気と言われています。治療により症状が改善したとしても、そこは一度歯周病に侵されたところです。治ったといっても溶けてしまった骨が元通りに戻っているわけではなく、ほとんどが歯と歯肉が弱い結合で治っているのにすぎないのです。ブラッシングが不充分であったり、メンテナンスを怠ると細菌が活動しはじめ歯周ポケットが深くなり容易に「再発」をおこします。
また、残念ながら治療の限界のため、部分的に治りきらないところが残ってしまうこともあるでしょう。そのような部位でもメンテナンスを継続することにより歯周ポケットがさらに深くならないように、「進行を食い止める」ことができるのです。

◆歯周病が全身に影響を及ぼす?◆
 歯周病は自覚症状があまりなく、いつの間にか悪化しているというのが特徴です。たとえ本人の自覚はなくても、歯周ポケットの中では、細菌と体との果てしない戦いが繰り広げられているのです。
歯周病が全身に影響を及ぼすメカニズムとして、口腔内の細菌自体が他の臓器に感染する歯性感染症と、歯周病巣の細胞が過剰につくりだした炎症物質や過剰活性化した白血球が、血管を通って他の臓器に移行して影響を与えるものもあります。口の病気とあなどっていたら、やっかいな病気を起こしかねませんのでご注意ください。
[心臓血管疾患]
最近、歯周病がリスクファクターとなりうる病気として、心臓血管疾患が大きく取り上げられてきました。
この病気に関与するメカニズムは、歯周病菌によって歯ぐきに炎症が起きると、血液中の繊維素が増加して血液の流動性が悪くなり、また同時に動脈も硬化させます。その結果、血管内に血栓ができて心筋梗塞や心臓発作といった病気が発症するのです。
[糖尿病]
糖尿病の患者さんは、歯周病にかかると重症になりやすいことが知られています。また一方で、その患者さんに抗生物質を用いた歯周病治療をすると、血糖コントロールの改善に寄与することが報告されています。このことから、歯周病が糖尿病のリスクファクターとしての要素があることも考えられています。
[誤嚥性肺炎]
これは、食べ物や唾液が誤って気管支に入ってしまうために起こる肺炎のことです。
最近注目されているのは、お年寄りや食べる機能に障害のある人が眠っている間に唾液を誤嚥してしまい、唾液中に含まれている口腔内細菌によって肺炎を引き起こしているということです。歯周病を放置したまま、しかも口が汚れたままになっていれば、このような人たちが肺炎を引き起こすリスクは、さらに高まります。
[低体重児出産〔早産〕]
歯周病にかかった母親は、早産や低体重児を生むリスクが高いことが報告されています。研究では、低体重児早産をした妊婦の羊水から、歯周病菌が検出される頻度が高く、さらに、この細菌は、口の中から血液をとおして侵入した可能性が示唆されています。
また、母親の歯周ポケットの炎症物質の量は、正常児を出産した母親に比べると多いことも、妊産婦の口腔内検査によって明らかになっています。

◆歯周病に関するQ&A◆
Q.歯周病の原因は何でしょうか?  
A.プラークと呼ばれる歯垢で、その7割以上が細菌から構成されています。また非常に強固に歯と付着しているため、薬品だけで除去するのは難しくなっています。そのため、機械的に歯ブラシで除去することが重要になります。 
Q.がんばって歯ブラシをしても歯周病になってしまうのでしょうか?
A.歯周病予防には歯の表面や歯と歯の間、歯と歯茎の境など、かなり行き届いた歯みがきが必要です。本人は十分磨けていると思っていても、実際には磨けていないことが多いため、歯科医師や歯科衛生士による各個人にあった磨き方と補助的な清掃用具(フロス・歯間ブラシなど)による歯みがき指導を受けることをおすすめします。
Q.口呼吸は歯周病に悪いのでしょうか?
A.はい。口呼吸することにより、口の中が乾燥しやすくなるため、プラークが蓄積しやすくなります。また唾液による自浄作用がなくなることから口の中の細菌の活動性を高めるなど、悪影響があります。
Q.かみ合わせが悪いと歯周病の原因になるのでしょうか?
A.かみ合わせが悪いことにより、一部の歯に不自然な強い力が加わり、歯ぎしりと同様に、歯周病の症状を悪化させる原因になる場合があります。またどうしても歯ブラシが当たりにくい場所がでやすいため歯垢が残りやすいという欠点があります。
Q.どうして歯ブラシをするときに出血するのですか?
A.プラークが貯まり歯茎に炎症が起きると、軽く歯ブラシをあてただけでも歯茎から出血しやすくなります。ただ、炎症の進行やその日の全身の健康状態などにより必ず出血するとは限りません。
Q.歯石はどれくらいおきに歯科医院に取りに行ったらいいのでしょうか?
A.本来、適切な歯磨きができていれば歯石は付きません。また歯石の付きやすさも個人差があります。歯磨きの指導を受けても時間がたてば、その記憶が曖昧に疎かになりやすいのも事実です。通常は1年に2〜3回がよいと言われています。また、かかりつけの歯科医師(歯科医院)を決めて、歯石の付きやすさを継続してみていただければ、どのくらいの期間で定期検診を受ければよいかわかります。
【歯周病の予防】
Q.歯周病は何歳くらいから気をつければよいのでしょうか?
A.歯周病の原因は歯の磨き残しから歯に付着するプラークです。よって日々その原因が蓄積されますから、歯が生えた時点から注意する必要があります。一般的な歯周病は40歳前後発症する場合が多いです。
Q.ブラッシングは食後すぐにしなければいけないのでしょうか?忙しいので毎食後すぐにブラッシングできないのですが?
A.確かに食事後は、口腔内細菌の活動性が高まるので歯磨きするのが理想的です。しかし、不十分な歯磨きを一日3回毎食後にするよりは、夜お休み前の1回だけでもしっかり時間をかけて丁寧に行き届いた歯みがきをした方が効果的です。
.歯周病の予防に歯磨き粉はどれくらい効果がありますか?
A..歯周病の一番の予防法はプラークの除去そのものです。一部の歯磨き粉には殺菌効果を挙げているものもありますが、あくまでもプラークをしっかりと歯ブラシなどで除去した後の補助的なものと考えるとよいでしょう。
Q.どんな歯ブラシがよいのでしょうか?
A.万人に適した歯ブラシというのはありません。歯磨きの方法と同様で、個々の患者さんの歯並びや大きさ、歯肉の状態などにより、どのような大きさ、硬さの歯ブラシが適しているかは変わってきます。歯科医師、歯科衛生士に指導を受けて下さい。
Q.歯間ブラシを使うと歯と歯のすき間が広がりませんか?
A.本来、歯と歯の間には若干のすき間が空いています。ところが、歯周病の方は歯肉が腫れ上がっているため、このすき間を感じません。歯間ブラシでプラークをコントロールすると、炎症が消えて歯肉が引き締まってくるために、本来のすき間が見えてくるのです。また歯周炎にかかり、すでに歯を支える顎の骨が溶けてしまった方は、歯肉の炎症がなくなると大きくすき間が空くことがありますが、これは骨の裏打ちがあるところまで歯肉が引き締まった結果であり、それ以上歯肉が下がることはありません。
◆歯周病のセルフチェック◆
下記の症状が1つでもある人は程度の差はあれ、歯周病かもしれません。すぐに検査を受けましょう

□朝起きたとき、口の中がネバネバする。
□ブラッシング時に出血する。
□口臭が気になる。
□歯肉がむずがゆい、痛い。
□歯肉が赤く腫れている。
□硬いものが噛みにくい。
□歯が長くなったような気がする。
□前歯が出っ歯になったり、歯と歯の間にすき間ができて、食べ物がはさまりやすい。
□歯がぐらぐらする。
□歯茎から膿が出る。
□歯を磨かない日がある。


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